リーダーズ メッセージ
医師を目指すとはどうゆうことなのか?
各方面のリーダーから
次世代の医療を担う学生と保護者へのメッセージ
第1シーズンは現在第一線で活躍されているリーダーの目線からのメッセージをお届けします。
参考書だけでは学べない、各方面のリーダー達の見識と経験に基づいた情報です。
【未来の医師に望まれること】
第一回目のインタビューは長年日本の医学教育に従事されてきた長谷川 敏彦先生にお話を伺います。
インタビューア:宮地理津子
長谷川 敏彦先生プロフィール
臨床経済研究会 理事
日本ストレス学会 理事
日本病院学会 理事
医療マネジメント学会 理事
日本VR医学会 評議員
医療の質・安全学会 評議員
国際高齢化・世代学会(World Aging & Generations Congress)理事
ISPOR日本部会理事
Coming Soon!【医学部受験における塾と家庭のパートナーシップについて】
長谷川先生:以下H
宮地:以下M
M:長年医学部で教育をなさっている先生に対して今日はお話をお伺いします。
私個人は医学部での教育の前段階にあたる入学時までの両親の子どもとのコミュニケーションや教育も非常に重要だと考えています。この点についても経験豊富な先生のご意見もお聞きできれば嬉しいです。
H:確かにそうですね。単に医学部に入ってしまえば後は安泰という話ではないですし、やはりどういう思いを持って目指すのかは非常に重要ですね。
M:はい。ですから私の立場からは、医学部を受験しようというように考え始めた事から成績を上げる事だけではなくて、親として子どもにどうコミュニケーションをとっていくのかが大切だと考えています。つまり、「医師になってどんなことをしたいの?」「どういうことからそう思ったの?」と本人の思いに対して両親が関心をもって会話をしてほしいと各方面でお伝えしています。
H:医学部の中には卒前卒後もワンパッケージで捉えている大学もある。そこでは教授と学生が日本の医療の未来や医師としてのキャリアを考える合宿がカリキュラムにあって、夜通し語り合う活動を取り入れている。そのような場では、学生個人の様々な思いが語られています。
私がその場に参加して非常に印象に残っているのは、特に女子大生が人生のプランにおいて結婚や出産の時期や子育てをどう支援してもらえるかについて学生の時点で悩んでいることです。女学生の悩みとは、学生時代のうちに子どもを産んだ方がいいか?医師としての研修を終えると出産に対する時間としてはぎりぎりだ。体のこともあるが、産んだとしても誰か世話をお願いできる人がいるのか?ということですね。
これらについてはなかなかキャリア教育がなされていない現状があります。おそらくその点で医学部受験の前に両親と本人が話し合うということもほとんどなされていないと思う。
M:次世代のドクターの教育に望まれていることについてお話をお聞かせください。
H:私が強く感じているのは、世界が変わってきているということ。医療需要が高齢社会にシフトし、私自身の言葉で言えば「ケアサイクル」にシフトする。医療の教育に携わる者としては、自分達の過去の経験だけを頼りにするのではなく、これまで自分達が生きてきた時代とは異なる世界を生きる未来の医者を育てているということにもっと意識を向ける必要があるのです。そのような視点で、高齢社会に適応できる教育カリキュラムを現在考えています。
M:そのような教育カリキュラムにおいて特に先生が意識されていることは何でしょうか?
H:それは「医療はチームである」ということです。医療行為はチームで行われるということをこれまでも言われてきていますし、私自身も言ってきているが、残念ながらどんどん状況は悪くなっているようです。特に患者との関わりにおいて、これまで以上に「パソコンの画面ばかりを見て患者を見ない」というクレームが増えてきているという声を関係者から聞いている。
やはり医療に、患者さんに何とかしたいという想いのある人でないとダメ。患者さんが悩んでいることに対して自分の腕で何とかしたいという仕事である。がんがん手術をしてかっこいいというイメージとか、とにかく稼げるというのではないですよ。医師とは患者さんと共有する仕事であることを理解してほしい。この点において医療はチームでなされるという概念は非常に需要なのです。
M:医学部に入るということは他の学部と違ってその時点で将来の仕事を定めていくことになりますが、キャリア形成の教育についてはどうでしょうか?
H:その点は、特に女性のドクターのキャリアとしての課題もあげられるでしょう。女性のドクターは出産育児に直面してリタイアしていく人も実際に多いと聞いています。
社会全般として女医の支援をどうできるか?国際会議においてはこの日本の現状はあり得ないと驚かれるという話も聞こえてくる。他の国の女医から「こんなにいい仕事なのに何故やめていくの?日本の現状が考えられない」と言われるとう現状。このことは日本の社会の一つの問題でしょう。
実際他の職業のキャリア形成と違って、女医さんはキャリアの構造として過酷なトレーニングを受ける時期と女性としてのライフプランのタイミングが重なっているというところが特徴的と言えますね。つまり、女医のキャリアの形成が他の職種についても一つのモデルになっていくのではないか?と私は考えています。
M:人生の選択肢として、結婚・出産をどうするか? Dr.の仕事をあきらめてしまう現状があるのですね。私も研修医の娘の母としてどういう支援ができるか考えてしまいます。
M:それでは、最後に医師を目指す学生に期待することについてお聞かせください。
H:せっかく医学部に入ったのなら、多くの国民の期待を受けているということも感じてほしい。人から期待されて本人が思いをもってそれに応えていくこと、このこと自体が満足した人生を送るには大切なことだと思う。
他の商売でもそうかもしれないが、悩みを抱えていて自分のことで抱えて相手がどういうことで悩んでいるのか探ることができたり、気づけるか?患者さんが何を求めているのか?という立場で考る人になろうとするのが一番大切です。
M:実際に本人が医師になってわかることも多いのかもしれませんが、だからこそ医師になる前の準備期間に疑問をもってアンテナをたてておくことが大切ですね。
H:準備期間に良く考えてほしい。高校の成績がいいということが必ずしも医師の適正があるということではない。この点を良く考えてみてほしい。
特に医学部に進みたいという本人の意思が大切で、両親の意思の押しつけではないということ。入学までは両親がサポートできても入学後に実際にやっていくのは本人に他ならない。
医師は他の仕事と比べてキャリアを築くまでの道のりが長いということもあります。6年で終わるかと思うとそうではない。特に女子の場合は人生の設計として、女性としての結婚と出産の時期と構造的でかなり過酷な長期のトレトレーニングの時期が重なることも事前に知っておいてほしい。
そしてあまり語られませんが、医者は体力と精神力。学力がとかく注目されるが、この二つが大前提。医学部の合格が成功ではないのです。良い医師として本人が患者さんや周りの人とどうやって豊かな人生を歩んでいけるか、この点を大切にして今後も教育に力を注いでいきたい。
M:医学部の合格が成功ではない、本当にそうですね。
先生、本日は大変貴重なお話をありがとうございました。
Comeing Soon!【医学部受験における塾と家庭のパートナーシップ】
池袋理数セミナー塾長 藤田 博人先生
インタビューア 宮地 理津子
長年医学部受験の専門家として多くの生徒を指導し、合格まで見届けてこられた藤田先生に、受験期の過ごし方とその後の医師としてのキャリアの関係性や家庭と塾の連携の必要性とポイントについて伺いです。ご期待下さい。