医学部受験期における親子コミュニケーション

 

 

「受験を成功に繋げるコミュニケーションとは」

         〜親である私達にできる最高のサポートとは〜

 

 

 

受験においての“成功”とは何なのでしょうか?

第一志望大学に合格する、または将来希望する職業を得るためにその大学に入学する。もちろん、それにこしたことはありませんが、実はもっと大きなそして大切なベネフィットがあります。

 

その中から導き出した答えは、受験においての成功とは、もちろんその子が希望する大学に見事合格することもとても大切なことですが、真の成功とは、その子自身が受験勉強という経験の中から自ら創り上げていく、「自律」「自立」「自信」「生きる力」こそ、その子の一生の宝物になり、その子にとって、素晴らしい、充実した人生を送っていくための基盤とできることであると感じています。そして、真の成功をサポートする一番の協力者がその子の親御さんなのです。

 

今回は、筆者が二人の娘たちの医学部歯学部受験から得た数多くの経験の中から、「受験を成功に繋げるコミュニケーション」〜親である私達にできる最高のサポートとは〜と題してご紹介します。

 

第一回 − 最高のチーム作りにおいてのコミュニケーション —

昨今、医療の業界で最も注目されている言葉は“チーム医療の実現です。患者さんを中心に医師、歯科医師、看護師、薬剤師等のコメディカルスタッフがそれぞれのポジションからしっかりと患者さんを支え、サポートしていく。

「医療はチームで完成されるものであり、各スタッフがそれぞれのポジションから最高のホスピタリティサービスを提供して初めて完成される」。

受験も同じく、「受験はチームで完成されるものであり、学校家庭それぞれのポジションから最高のサポートを行い初めて完成される」とも言い換えられるでしょう。

 

成功する受験とそうでない受験には、このチームの関係性が大きく影響していきます。そして、このよりよい関係性を作り上げていくのが、“コミュニケーション”なのです。当然ながら、受験する本人を含め、それぞれのチームにはそれぞれの役割と責任があり、これらのチームが一丸となって本人の希望するゴール達成に向けて進んでいきます。家庭というチームでは、子供の力が十分に発揮できる環境作りというサポートがポイントとなります。安心でき心が落ち着ける場、エネルギーを充電できる場、時には外では中々出せないストレスの出し場になることもあるかもしれません。子供にとっては世界で最も自分らしくいられる居場所であることは間違いありません。そして、この環境作りにとても影響してくるのが親子間のコミュニケーションなのです。

 

■ 自発性を育む関わり

子供へは大きな可能性と期待に胸を膨らませたはずなのに、その期待が大きければ大きい程、何故か「裏切られた」という気持ちになってしまい、気がつくと子供の可能性を信じる力にいつの日か勢いを失っていると感じたことがあります。しかし、親が落胆したり、ヒステリーになっていても何も解決しませんし、逆に子供にとってはマイナス効果です。

 

このような時こそ、ちょっとした役に立つ考え方、ヒントやスキルを親が学び実践できれば、お子様にもプラスになるばかりでなく、親御さん自身も輝き、活き活きとこの時期を共に過ごすことができます。親御さんも自らの成長に向けて積極的に学び、取り組むことで「子供の受験」というチャンスを親である私達の人生において最大限に活かすことが可能です。

 

子供の成長のスピードには目を見張るものがあります。親子間のコミュニケーションもこのスピードに合わせて、進化していく必要があります。

「できない子供」に対してのコミュニケーションは、「あれはダメ」「こうしなさい」などの指示命令型が主体であり、すべての方向性を親が指し示すコミュニケーションになりがちです。段々に「できる子供」へと成長している子供には、「あなたはどうしたい?」「どうすることがよいと考えているか?」などの未来肯定質問型のコミュニケーションの比重を増やしていく必要があります。


特に注意したいのが、「なぜ、このようにしなかったの?」「どうして、あの時に言わなかったの?」などの過去否定質問型のコミュニケーションはその辛い出来事をさらに強化し、いつまでも失敗というレッテルのままその子をその場に止めてしまいます。


このようなコミュニケーションばかりが続くと子供は親との会話をストップさせます。人間は本能的に快を好み不快を避けます。親とのコミュニケーションは不快であると認知すればするほど、親との関係作りも避けるようになります。「子供がこの頃あまり話さないな。」と思った場合は要注意です。まずは、いつでも聴く準備があることを子供に伝えて下さい。そして、子供が話を始めたらその会話を最後まで口を挟まず聞いて下さい。コミュニケーションとはたとえ言葉を交わさなくとも自然に相互間で行われています。たとえ会話がなくても隣で一緒にその場を共有することで一体感を感じることができます。「いつでもあなたが望むときはそばにいますよ。」というメッセージを送れます。


 

■ 何気ない関わりが子どもの成長を支える

大学受験期の中で、子供と接することができるのはほんの僅かな時間です。我が家では、休日の朝食での10分やたまに同席する車での移動の時間などを活用し、親子間のコミュニケーションを取る工夫を行いました。子供の目を見て、あいづちを打って、子供の話をただ聞くというコミュニケーションの後は子供がとても晴れ晴れした笑顔になっているような気がしました。人は自ら話をすることにより、たくさんの絡まった情報を解きほぐし、思考の整理をすることができます。そして、何よりその話を一番聞いているのはその子自身なのです。親子間の情報共有が正確で早ければ早いほど、コミュニケーションの質も高くなります。

まずは子供が話せる場作りと話したくなる雰囲気作りを目指してみて下さい。これこそが、最高のチーム作りの第一歩になります。